爪垢は苦手

画力に問題がありますがお許しください。

自室に勝手に入る友人との付き合い方

 

相談者様プロフィール
20代女性/アパレル会社勤務/Eカップ/獅子座

 

相談内容
友人とルームシェアをして1ヵ月になります。かれこれ10年近くの付き合いがあり、なんでも分かり合えると思っていたのですが、一緒に住み始めてから、少し不信感が出てきました。
リビングなどは共用で、お互いの個室には入らないというルールなのですが、どうも私がいない間、部屋に入られているような気がしてならないのです。物の配置が微妙に変わっていたり、閉めたはずの窓が開いていたり、違和感を覚えることが多々あるのです。
あまりにそれが何度も続いたため、ある日プチトラップとして、ドアの間に髪の毛をはさんでおきました。帰宅後それを確認すると案の定、髪の毛はなくなっていました。別に何かなくなった訳でもないのですが、信頼していた友人が、無断で私の部屋に入っていると思うと裏切られたような気持ちで、今後どのように接して良いのかもわかりません。
何かアドバイスをいただけませんか?
 
世界一役に立たない回答
たとえ何でも話し合える家族同士ですら、自室に許可なく立ち入られるのは気持ちの良いものではありません。それが長い付き合いとはいえ、他人だったらなおさらのことでございます。また、親しい人間に対して罠を仕掛けるような心苦しい立場におかれている相談者様の心の痛みは想像を絶するものです。

お便り頂いた「今後どのように接して良いか」という文脈から、「距離をおかずに今後も接し続ける」スタンスで回答させて頂きたいと思います。

まず、ひとつ残酷な結論を申し上げますが、自分以外が侵入不能となる状態を作り出す(施錠するなど)以外でご友人が勝手に部屋に入ることを止める手段はございません。今回の一件を相手に突きつけ、仮に「もう二度と勝手に入らない」などの言質を取ったとしても一度産声を上げた不信感はそう簡単には消えないものですし、不可侵条約の根拠となるものでもございません。

ご友人の心理状況を考えると、あなたの部屋に入ったことに対して大きな罪悪感を抱えていないことは想像に容易いといえます。
それはご友人様の行動や性格に起因する、というよりも、時代が浮き彫りにさせた人間の一面から説明することができます。

SNS全盛期の現在、部屋に限らずなんでもシェアできる時代に突入致しました。何の気無しにインターネット上にアップした寿司屋ペロペロも、「女は産む道具」という政治家の失言も、豊臣秀吉像に中指を立てるアジア人の悪ふざけも、あらゆる情報共有が小学生でも可能になった今だからこそ起きる問題だと認識されがちですが、「人」が「何か」を分かち合う動物的本能は太古の昔から存在しました。 IT技術が発達した今だからこそ浮き彫りになった、というだけの話です。

1539年、四国土佐の国にて長宗我部元親(ちょうそかべもとちか)という武将が産まれました。彼は色白でおっとりしており、初陣も遅かったことから「姫若子(ひめわこ)」と呼ばれ領民家臣から頼りないイメージを持たれていましたが、最終的に四国統一を果たしたことで「土佐の出来人」と畏怖されるまでになりました。
彼が四国制覇を成し遂げた政策のひとつに「一領具足(いちりょうぐそく)」というものがございます。それは農民がいち早く戦の招集に応じられる為に取り入れられ、結果的に農兵によって組織された部隊の戦力増強に大きく起因したと伝えられています。
その一方で医療知識のない農民達が刀傷による出血を抑える為に土を傷口に塗って対応したことから破傷風、ウイルス性肝炎、梅毒がまん延したそうです(諸説あり)
そもそも血液感染という概念が認識されるのはかなり先の話なので、当時の人々はいつの間にやら、意味もわからず、他人の血液をシェアしながら死んでいったわけです。

ここで一つ考えて頂きたいのが、仮に当時、破傷風やら肝炎がそれなりに認知されていたとして、戦場という死線を、艱難辛苦、乗り越えてきた友に対して「お前からシェアした体液でワイ死んだんやけど」とクレームをつけただろうか、ということです。
苦楽をともにした戦友に対して抱く最大限のリスペクトが、血液のシェアごときで薄いものになってしまうとは到底思えないのです。

今後もご友人と深い関係を続けたいなら、はたまたモヤつく自分を納得させたいなら、ものの例えではなくどうか血を流し合ってみて下さい。涙が枯れるまで罵声を浴びせ合って下さい。髪で首を締め、ブラを剥ぎ取り、スリムガードで気道を塞ぎ、マツエクを眼球に押し込む。命をかけて向かってくる相手に対して人間は心を開き何でも許せるようになるものですし、そこに男女の差は存在し得ません。
血で血を洗うことによって育まれる友情に対人関係の美しさを感じる取ることができたとしたら、あなたがこのストレス社会で生き残ることは赤子の手をひねるようなものだと、きっと気付ける筈です。

あなたの幸せを心から祈っております。

遠藤 俊通