SMについて
相談者様プロフィール
プレイの際に私は首を締められたり、ムチでぶたれたりしたいんですが、彼氏にそれを頼んだら「好きな子にそんなことできない」と言われました。
どうしたらいいでしょうか。
本稿ではSM、つまり一般的な認識における
Sadism、Masochismの解説をさせて頂きます。
ご相談して頂き有難うございます。
SMに限らず、あらゆる面で共通して言えることですが、いきなりムチだの蝋燭だの引っ張り出しても引いてしまうのが人間というものです。
料理したことが無い独身男性が「なんか自炊はじめようかな~」って呟いたのを良いことに圧力鍋プレゼントしても、あんなもん取り扱いに困って光の速さで産業廃棄物と成り果てるのと一緒で、大げさな道具は足かせにしかなりません。
お話を伺っている限り、あなたは暴力に何かしらの快感を得られる体質のようですが、別にそれはそれで良いとは思います。ただ物理的な暴力には必ず「飽き」が発生します。
「飽き」はさらなる暴力を求め、挙句の果てには変な場所にピアスやらタトゥーやら入ったわけのわからない生物となることは目に見えています。
何事も順序が大切であり、むしろ「日常」を「SM」に昇華させることがあなたの未来を明るく照らすと私は信じています。
「日常」を「SM」に昇華。言葉で表現するのは簡単ですが、それには人智を超えた想像力が必要です。しかし安心してください。
この手の「人智」は時間と労力さえ惜しまなければ、大したハードルとはならないのです。
少々長い自分語りのお付き合い頂ければと思います。
2008年8月。当時18歳の私は恥ずかしいほど生意気な人間でした。
肝臓がんを疑われるほど肌を焼き、美輪明宏を彷彿させるレモンイエローのソフトモヒカン。夜でもサングラスをかけちゃうミッドナイトドンキ族代表みたいなスタイルを貫いておりました。
性格と顔が悪いので異性から好かれることはありませんでしたが、間違いなく自分に酔っていました。そんな若造を想像してください。
ある日私はmixiで一人の女性と知り合いました。20代後半の仕事の出来そうなOLみたいな写真を載せていました。
「ドMです。いじめてください」
そんなプロフィール文言に対し、私は「責めのプロと言われています。ぜひお会いしたいです」と、こんなような見栄っ張り全開のメッセージを送り、トントン拍子でお会いすることとなりました。
ちなみに当時の私の女性遍歴は、3名です(素人1、プロ2)
「手錠でもすればなんとかなる」
そんな浅ましい思いで、新宿アルタ前で彼女と対面致しました。
デニムのミニスカートにネイビーのラコステのポロシャツ。なんてことのない服装でもサマになる、とても美しい方でした。顔色の悪い深津絵里って感じでした。
半分素人童貞みたいな私ですら、会って早々にホテルに向かうのも無粋と感じ、ドンキのアダルトコーナーに歩を進めました。
暖簾をくぐり物色していると彼女はつぶやきました。
「え、ここで道具使うんですか。」
「緊張してるんですか。大丈夫ですよ」
「いや、なんかオーソドックスで残念だなと思って。」
今でも彼女のゾッとするような失望した目線を夢に見ます。
私がモゴモゴしていると、彼女は言いました。
「はあああああ。わかりました。薄々思ってたけどあなた慣れてないですよね。いいですよ。あなたの思う限り、私をいじめてください。何でも付き合います」
完全に読まれていました。しかし、ここまで言われて私も引き下がるわけにはいきません。
視野を広げないといけない。
生半可な責めでは俺がやられる。
女に負けるわけにはいかない。
そんな思いが私の心を支配していきます。
20分ほど考えた末、私はローションと碁石を購入しました。
心なしか、彼女が私に興味を持ってくれたのを感じ取りました。
私は彼女を連れ、バッセンに向かいました。
「これから貴方の中に碁石を詰め込みます。その状態でボールを打ってください。」
これは戦国時代、当時の高級品である砂糖を盗んだ百姓に対し、砂糖水と食塩水を交互に飲ませ窒息させる拷問から着想を得たものでした。
バッティングセンターのトイレ。碁石と彼女におぼつかない手付きでローションと唾液を塗り込み、ひとつふたつと押し込んでいきます。
女性経験が殆どなかったのでそれが彼女の興奮によるものなのか、はたまた人間の本来持つ防衛力によるものなのか定かではありませんが、私の指先に高い粘度のぬかるみを感じました(後から考えたらローションでした)
じめじめとした肉壁と石が生み出す摩擦音が、私の脊髄に電流を流します。
15個ほど押し込んだあたりで、ついに余剰スペースがなくなり、彼女の手を引きバッターボックスへ向かいます。彼女の下着は私のポケットにねじこみました。
空振り、空振り、ヒット、空振り、ファウル、空振り
彼女がバットを振る度に、碁石が溢れ、それを詰め直す。
そんな作業を繰り返しました。
人間とは恐ろしいもので、10分ぐらいして飽きてきました。恐らく彼女も飽きてきたんだと思います。
次のバリエーションは?!まさかこれで終わりじゃないよな?!
そんなレーザービームのような視線が私に突き刺さります。
しかしそんなこと言われても私はただの見栄っ張りのチンピラ。どうしよもありません。
彼女は私に叫びました。
「お前は何のためにそんなに鍛えてるんだ!!ぶっとい腕は何の為にあるんだ!!その手は女殴るためにあるんだろ!!」
私は余りの恐怖に少し漏らしつつ、一つのルールを提案しました。
「バットをふると、碁石が落ちると思うけど、その色を私が指定します。違う色が出たらぶちます」
彼女は大変満足したようで、その日最も素敵な笑顔を私にプレゼントしてくれました。
バット、碁石、ビンタ。
彼女の顔はみるみる腫れ上がっていきます。唇は避け、アイラインは涙で乱れます。
それに従い、彼女の太ももに体液が光る。
反比例するかのように、私の下半身は授業中あてられたシャイな女子のように、首をもたげます。
「こんなもん勃つか!」
私は手のひらについた彼女の鼻血やら涎やらを見ながら、俺は一体何をやってるんだろう、と、めちゃくちゃ帰りたくなりました。
私は頭を垂れました。
「すいません、私の負けです。本当にすいませんでした。」
その言葉を聞いた彼女はニッコリ笑い、「うん、楽しかったよ。ホテルいこっか」と私の腕を引きました。
ホテルでキャメルを吸いながら彼女は語り出しました。
「私、あんたみたいな自称Sの男をいじめんの、ホント好きなんだよね。」
「もう二度とS名乗りません。本当に勉強になりました」
「あんだけ私を殴っといて終わりだと思ってんの。あとパンツ返せ」
彼女はハンドバッグから何故か粘土を取り出し、いきなり私の顔に押し付けました。
私は意味がわからず、空気を貪るすることしかできませんでした。
数十秒、そんなことをしていたら私の顔面の魚拓が出来上がりました。不細工です。
「この粘土みてオナニーしてみ。それで許してやる」
その時私は気付きました。
真のMとは、この世で最も醜いもので性欲を発散することなのだと。
私は自分の顔(粘土)で射精しました。
不思議と、爽やかな気持ちでした。
長くなりましたが、「日常とSMをリンク」を一日で味わうことができた貴重な体験でございました。
相談者様は、暴力に飢えていらっしゃいます。
それはいいんです。
ただ、私が言いたいのは発想力ひとつでどんなものでも責めの道具になり得る、ということです。
あなたのパートナー様がムチや蝋燭に抵抗があるようでしたら、碁石と粘土。
このあたりから始めてみたらいかがでしょうか。
あなたの幸せを心から願っています。
遠藤 俊通