爪垢は苦手

画力に問題がありますがお許しください。

若者とだけ接して生活したい

 

相談者様プロフィール
60代男性/建材メーカー役員/年収2,500万/独身

 

相談内容
おかしな意味ではなく、若い人とだけ関わりたいです。下心は断じてありません。他人を冷静に観察したとき、10代20代ぐらいまでの子は、優しく人を思いやれる、まっすぐで素直な子が多い。謙虚で愛嬌がある。対して、同世代の者に対しては…と、ため息が出るような負の感情しかわきません。セルフレジもタッチパネル注文も、そんなに難しいか?と思います。
病気自慢ばかりしている同年代と過ごすより、輝かしい未来を持つ若者と過ごす時間の方が圧倒的に有意義です。
自分の考え方、時間の使い方、ひいては生き方、何をとっても若い人のそれとそっくりで、実際見た目以外は20代で完全に通用すると思っています。(スポーツジム通いもあってか「若々しいですね!」とも言われ、大胸筋はBカップはあります)
私も人生後半戦ですので、無駄を省いて合理的に生きていきたい。どうしたら若い人とだけ関わっていけるでしょうか?
 
世界一役に立たない回答
遠藤がすでに10代20代ではないのですが、そんな私に相談して頂いたことに感謝申し上げます。

私の回答の前に、お便りを拝読しました率直な感想をお伝え致します。 まず、ご相談者様は私と感性が非常によく似ており、同じ悩みを抱えて生活されているということです。
年をとるごとに同世代が時代に取り残されている機会が増え、話が合うのは若者だけ、という状況に孤独を覚え、気付けば自分のほうが世界から取り残された錯覚に陥る。
皮肉なものですよね。アンチエイジングやITを推奨するかのような情報弱者に冷たい、生き馬の目を抜くような世の中であるのに、それを追い求めすぎると異端扱いされる。
でもどうかご安心下さい。世界が貴方を非難しても私だけは味方であることを忘れないで下さい。

安土桃山時代に可児才蔵(かにさいぞう)という一人の武将がいたことをご存知でしょうか?戦で討ち取った武将首が多すぎて持ち帰りきれず、死体の口に笹を突っ込み自分の手柄の証拠としたことから「笹の才蔵」と呼ばれた、まさに戦の鬼というべき男です。
彼はよく「年をとって衰えるのは人による」と言っていたそうですが、ある時若い衆に重い長刀を持たせて歩いていると、その若者から「才蔵さんも年とったんですね」と言われ斬り殺した、という逸話が残っています。

私は、相談者様と可児才蔵の持ち合わせる本質的な部分はかなり似ていると感じています。 才蔵は上司である大名と意見が合わないとすぐに転職し、それでも高い石高で他の大名から召し抱えられる高い技能を持つ男です。
簡単なプロフィールしか私は存じ上げませんが、無知や非力を否定する強いお気持ちを持ち合わせながら、孤独に負けず人生で勝ち続け、高い社会的地位を確立されているということは、あなたは本当に優秀な方なのだと思います。

では、才蔵とあなたの決定的な違いは何でしょう。
それは接することが苦痛な対象と距離を置くことができる能力です。無理に若者と距離を詰めることよりも、時代の老廃物とも言える同世代から自分を切り離して生きることの素晴らしさを実感すべきです。

以前キャバクラで私の席についた女性が加藤ローサ似の美人だったんですが、近くで見たら角栓や歯石が目についてあまり楽しめない自分がおりました。
私の視力は裸眼0.1以下で普段コンタクトを使用して生活していたのですが、その日を境にメガネ生活に変え、免許証の条件欄に「眼鏡あり」との記載を加えました。
それは見たくないものをそのタイミングで、臨機応変に、条件反射で、認識不能にする一種の防衛本能です。あブスだな、と思ったらすぐにメガネを外すのです。
このスタイルに変えてから人生のストレスが大きく減少しました。

今のあなたは私のメガネ着用状態です。心のレイバンを、アイグラッシーズを、自由に着脱できる自分に訓練すること。それが今のあなたが最も生きやすくなる手段だと私は思うのです。
「得る」ことより「失う」ことで得られる華やかな視界を、是非味わっていただきたいと思っています。

あなたの幸せを心から祈っております。

遠藤 俊通