爪垢は苦手

画力に問題がありますがお許しください。

浮気相手に浮気未遂がバレました

 

差出人プロフィール
山梨県在住/20代男性/好きな動物:虎

 

お便り

同い年の妻がいる身ですが、私は6歳年下の男性と不倫しています(マサノブ君と言います)

数年前、私の経営する会社に就職希望とのことで彼はやってきたのですが、色白なのに筋肉質な体格、大きな吊り目と薄い唇の若者に私は一目惚れしてしまい、社長秘書として雇うことに致しました。
保有資格が無く、学歴がいいとも言えない、新人なのに私に可愛がられるマサノブに対して先輩社員たちは当初、敵意に近い感情を持っていたようですが、要領良く仕事を覚え真面目な彼のことをベテラン勢は今では大きく評価しています。
またマサノブは定期的に社内で開催される相撲大会にも積極的に参加する人付き合いの良さも持ち合わせており、夜は夜で私と相撲の特訓に精を出しています。稽古後すぐにタバコに火を付けないところも好きですし、身体の相性も良く、何より私の悩みを察してすぐに行動に移してくれるマサノブは人生に欠かすことの出来ない存在です。

お話を聞いて頂きたいのは、先日行われた飲みの席での一件です。私と取引先の重役の2人で食事を楽しんでいたのですが、そこに先方お抱えの若い男性ドライバーが姿を現しました。
女性的な切れ長の瞳に小さめの唇が特徴的なドライバーに欲情した私は、取引先が酔い潰れている隙に彼の小袖に手を入れ、首筋に顔を近付けたのですが強く拒否されてしまいました。

そこまではいいんですが、どういうわけか私が他の男性に手を出したことがマサノブにバレてしまい「距離を置きたい」旨のことを言われてしまいました。
これから先、長野、新潟方面へ支店を増やし会社規模を大きくしていきたいと考えているのですが、そんな大事な時期に頼れる社員にスネられてしまっては勝てる戦も勝てないですし、何より未遂に終わったことをそこまで責められるのはどうかと思います。

私はこれからどういった行動をとればいいか、アドバイス頂ければと思います。

 

武田晴信(信玄に改名予定です)

 
お返事

想像するに今頃あなたはマサノブ様に対し、謝罪のお手紙を頭を掻き毟りながら書いている頃かと存じます。
「口説いたは口説いたけど結局なんもなかったし本命はお前だよ!」的な内容の弁明書が400年後には国宝級に貴重な歴史文書となっているとは夢にも思われないでしょうが、お気を確かに持って頂きたい。(東京大学歴史資料編纂所に保管されています)

 

「人は石垣 人は城 人は堀 情けは味方 仇は敵なり」という仁義、人道を謳われたあなたの言葉に感銘を受ける人間は令和の時代にも数多くいますが、翻って「武田信玄は金山開発の労働者に給料を払いたくないから生き埋めにした」なんていう黒い噂も耳にします。
私が申し上げたいのは、そういった事実があったかどうかを探ることはそこまで重要ではなく、時代を駆け抜けた人間が残した言葉を今を生きる私達がどのように捉え、人生に役立てて行くかが大切であるということです。

 

「義」と「利」に揺れ動くあなたの言動は人を惹きつける大変魅力的なものであり、組織のトップが若手社員に(言い訳がましいといえばそうですが)謝罪のお手紙を書かれている様子はいじらしく、美しさすら感じます。
しかし、それ以上の謝罪や弁明は不要でございます。むしろ、必要以上に身内に愛情を注ぐことはライバル企業から弱みを握られる原因ともなりましょう。
特に名古屋の織田鉄鋼㈱、関東の㈲北条開発は優秀なスパイ(忍者)を抱えております。高度な情報戦が繰り広げられることが目に見えておりますので男遊びされるにしても、深入りなさらないようお願い申し上げます。

また、南蛮文化の流入に伴って日本国内において梅毒の感染が広がりを見せていることもお伝えしておきます。山梨・長野は港が無い為、外国の方と触れ合う機会は少ないかと思いますが、頭の片隅に入れて頂ければ幸いです。

最後にお願いしたいことですが「風林火山」という言葉はめちゃくちゃカッコいいし、私もガラケー時代にメルアド(死後)にするぐらい好きなんですが、山梨県民ですら使いどころがよく分かってない節があるので勉強嫌いな若者にもわかる解説書を後世に残して頂ければ嬉しいです。
あと来世までに私も気合を入れてバッキバキに鍛えておきますので、機会があれば私とがっぷり四つ、相撲の稽古をして頂ければと思います。勝手なお願いではございますがご検討のほど、よろしくお願いいたします。

上杉謙信、松平元康、織田信長と戦う相手に事欠かない人生でございましょうが、お体を労りながら蹴散らしてくださいませ。

 

遠藤俊通

 
~お知らせ~

戦国武将からの手紙をテーマにした新たなカテゴリを作りました。
一度は名前を聞いたことのある有名人の「へー!そんな一面もあるんだ」というニュアンスの記事を書いていきたいと思います。
ご要望や苦情等があれば全力でお応え致しますので、何かございましたらコメント欄までお願い致します。
マニアックな内容ではございますが、当ブログをきっかけに少しでも日本の歴史に興味を持って頂ければ幸いでございます。